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転がって用いる

2024.05.20NEW

お疲れ様です。設計スタッフの白井です。

 

普段、散歩をしたり、車窓から知らない土地をぼーっと眺めている時、ふと自分が生きている身の回りには数えきれないほどのものが溢れていることを実感します。

それは技術の発展や社会構造の変化などを背景とした産物なのだと思いますが、地球環境問題や資源の有効活用が問われる現代においては、有限の資源をいかに上手く使いこなすかが求められていると思います。

  

転がって用いると書いて「転用」といいます。建築界隈ではしばしば用いられる言葉で、本来の目的とは別の用途で利用するといったニュアンスで使われます。そのスケールは様々で、建物用途の転用から構造部材、素材の転用まで様々です。

 

  

そんな事を知ってか知らずか、こんなものを見つけると魅力を感じ写真を撮りためています。

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ごみ置き場のネットを抑えるための重りです。重りのハンドリングを良くするために傘の持ち手をモルタルに刺しています。作られた過程までは分かりませんが、大きさから園芸ポットを型枠代わりにしたのではないかと推測できます。水抜き穴を、持ち手を刺すための穴と読み替えて利用しているのではないでしょうか。天才だと思いました。

 

 

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セキュリティポールです。いざという時に移動出来るように舗装に埋込まず独立した構造を持っています。土台に選ばれたのはタイヤです。確かに斜めにして転がせば動かしやすいし、傷もつけない。素晴らしい発想だと思いました。

 

 

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JR東海道本線 根府川駅のプラットフォームです。可愛らしい色が魅力的ではありますが、よく見ると構造躯体の柱や梁が線路のレールで作られています。おそらく建設当時の鋼材が貴重だったことから、摩耗したレール更新のタイミングでプラットフォームの部材として転用されたのだと思われます。

 

 

 

あくまで一例ですが、このように見過ごしてしまいそうな一見取るに足らない日常の中にも転用の事例がたくさんあります。見つける度に、なるほど!こうも使えるのか!とハッとさせられます。新しい商品を生産しては廃棄する消費サイクルが加速する中で、痛烈に批評的であり、ものづくりの未来を示唆しているように映ります。

 

転用されたものの面白さは、転用前の意味を引っ張ってきてしまうという宿命があるところです。傘の持ち手やタイヤは転用によって見事に読み替えられ、別の役割が与えられていますが、どう見ても傘の持ち手だし、タイヤです。この認識は傘の持ち手はあの形である。や、あの丸いものは車のタイヤである。という私たちの生活に馴染みすぎているが故の固定観念とでも言えるパブリックイメージによって生まれているものです。

  

見る人によっては構成や秩序がなく滑稽なものに映るかもしれませんが、パブリックイメージの強い傘の持ち手やタイヤの使い方を、固定観念にとらわれずに純粋なものとしての有用性を評価し別の役割を与える行為は、とても創造的な思考だと思います。

  

 

普段の設計業務でプランニングや納まりを検討する中、行き詰まるとうっかりあれもこれも、ここにこれを足して...といった具合に過剰に性能を与えることで課題解決を図ろうとしている頭でっかちな思考の自分がいますが、当たり前や固定観念に限定されないこれら事例のように、肩の力を抜いて応えるべき条件や目的を見極めることで、創造的な思考回路が見えてくるのではないかと思いました。行き詰まったら自分の頭も転がして用いてみようと思います。

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