2023.12.18NEW
伊豆の松崎町に行ってきました。
松崎には長八美術館があります。
長八美術館は私が就職したころに完成した建物で設計は石山修武さんです。
石山さんはコルゲートパイプを使った住宅などを発表していて変わったものを作る人というイメージでした。そんな石山さんが設計した美術館ということと展示されているものがコテ絵ということでそれがどんなものか気になっていました。しかし交通の便が悪くなかなか行くチャンスがありませんでしたが今回思い切って行ってみました。今では伊豆縦貫道路の整備が進みかなり便利になりましたがそれでも5時間近くかかってしまいました。
長八美術館は松崎の街の南の外れにあり、その少々変わったたたずまいは控えめな存在感を見せていました。ちょうど外壁の修繕工事をやっていましたがそれもほぼ終わっていてきれいな姿を見ることが出来ました。
長八美術館外観
館内のデザインは外観と比べおとなしめで展示作品が主役となるように出来ています。空間構成は2つの展示室を2階の渡り廊下でつなぎ、渡り廊下からは2つの部屋が見渡せるようになっています。コテ絵は漆喰をコテを使ってレリーフ的に作ってあるのですが、長八は江戸末期に狩野派で絵画を勉強しており、コテ絵は単なるレリーフではなく立体的な絵画として立派に成立していました。展示室には拡大鏡が用意されており、間近で見ているのに拡大鏡が必要なくらい細かい細工がされていました。
雑誌で長八美術館が紹介されている写真を見ると、隣に見るからに石山修武な建物が写っていて気になっていたのですが、「町営民芸館(カサ エストレリータ)」でやはり石山さんによる設計でした。
民芸館外観
今は美術館の別館的に使っているようです。こちらはコルゲートパイプは有るは鉄骨のオブジェは有るはで自己主張の激しい建物です。内部も外観に劣らずコテコテにデザインされており、設計者としては参考になるディテールが沢山ありますが、どんな作品を展示しても負けてしまう感じです。当日は「コテ絵コンクール」の佳作展をやっていましたが職員も見学者も居なくて残念でした。
民芸館内観
民芸館内観
石山修武さんはこの二つの建物だけではなく、橋の欄干もデザインしたと読んだ記憶があり、橋も見てきましたがこちらも石山さんらしさがたっぷり表れていました。
石山さんデザインの欄干
石山さんデザインのオブジェ
帰ってきて雑誌やネットで調べてみると石山さんは他にも沢山の物をデザインされていて、町全体をデザインしていたことが分かりました。松崎町はなまこ壁が有名ですが石山さんは街のデザインに積極的に取り入れています。またお店ののれんも統一したものをデザインされたようです。思い起こすとあれもそうだったのかこれもそうだったのかと気付くものがあり、もっと調べてから行けば良かったと思います。そこまで石山さんにお願いした当時の町長さんは大英断だったと思いますが、統一感の有る美しい街に仕上がっていました。それによって伊豆の交通の便の悪い小さな町に観光客を増やすことに一役買っており、今でいう街おこしが成功した例だと思いました。
街並
伊豆西海岸は切り立った山がそのまま海に沈んでおり平地が少ない複雑な地形をしています。そこが荒波によって削られ素晴らしい断崖絶壁の景色を作っています。国の天然記念物になっている堂ヶ島の天窓同、黄金崎、千貫門などの名所を作り出しました。また複雑な海岸線は豊かな海の幸をもたらしました。
千貫門
黄金崎
初めて行った伊豆西海岸でしたが、長八美術館だけではなく素晴らしい景色と美味しい海の幸そして温泉を堪能した小旅行となりました。
谷野守右
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