2023.04.17NEW
お疲れ様です。設計スタッフの白井です。
すっかり桜の花も散ってしまい、鮮やかな新緑が芽吹いてきました。私としては浜松に越してきて、2回目の春になります。
この季節は花粉症と頭上に蚊柱を作る虫には苦しめられますが、過ごしやすい気温、草花の香りや彩り、新生活の節目として家族写真を撮っていたり、友人たちと夜桜を見ながら談笑している光景が見られ、人間も動植物も生き生きとした感じがして好きです。
そんな生き生きとした通勤途中の川沿いに生えていた野草群です。
普段、気にもとめなかった場所で写真を撮ったのは、花びらの形が綺麗すぎる一輪のタンポポが目に入ったからです。
さて、唐突ですが皆さんはこの写真のタンポポを見てどう感じますか。
・綺麗に咲いているけど周りの雰囲気と合ってないよねー。
・綺麗すぎて周りの野草も綺麗に見えてきた!
時間や天気、気分によって見方も変わるかもしれませんが、生き生きとした環境を身体中で感じていたこの時の私は、このタンポポによって一見地味な野草たちがすごく尊いものに見えるという春の魔法にかかり、よく見たら「隣には小さい青い花も咲いてる!」「葉っぱのカタチってこんな多様なんだ〜」「目に見えない土の中では同じ養分を共有しているのに、こんなに色や形、大きさが違う花が咲くんだ〜」など、一輪のタンポポに刺激され、いろんなことに想像を巡らせました。
この一連の流れは、風によってどこからか運ばれてきたタンポポがこの地に根付き、周辺とは一見違う色や形の美しい花を咲かせたことで、ついうっかり写真を撮ってしまった私をはじめとし"周辺の環境を刺激していた"ということになります。もしタンポポが周りの野草と瓜二つの花だった場合、私はスルーしてしまいこの場所の魅力に気づけなかったかもしれません。
しかし、タンポポが咲いていたおかげで私はあの地に小さな青い花が咲いていることを知れたし、周りの野草を美しく感じることができ、あの小さな場所の魅力を発見することができました。
この時私は、あるものを生み出す時、「周りの環境に対してリアクションする受動的なモチベーション」か「環境に対するアクションを起こす能動的なモチベーション」かという違いがあるということをこの能動的タンポポから学びました。
どちらが正しくて偉いというわけではありませんが、建築設計の領域においては周辺環境への応答の仕方が一つの評価基準となります。むやみに周辺の文脈を無視し奇抜なものをつくることには賛成しませんが、(このタンポポがそうであるように)土地に根を張り、同じ土壌から結果としてカタチが周辺と異化することは、退屈だった周辺環境の魅力を引き出したり、美しいものだと感じさせてくれる効果があるかもしれません。
前提としていた周辺環境の持続性が弱くなっている縮小社会の現代において、何を根拠として設計するのか、環境に対してリアクションするのか、アクションを試みるのか、能動的タンポポは私にそう問いかけているように感じました。
竹下一級建築士事務所HOME > ブログ