2014.11.17NEW
少し前になりますが、深夜テレビで大仏を彫る仏師のドキュメンタリーをやっていました。
何年か前の番組の再放送だったようですが、松本明慶さんという方が広島の大願寺におさめる不動明王の大仏を彫る過程を取り上げた番組でした。
数年前 ケアハウスを設計した時にお施主さんがエントランスホールにおく お地蔵さんの製作を依頼して作家の方を訪れたこともあって木彫には少し興味があったのですが、想像以上におもしろく、感銘をうけました。
この大仏は40年近く前に依頼をうけながらも自分の未熟さゆえに手がつけられなかったという思い入れの深い作品ということで、神が宿るとされる「白檀(びゃくだん)」の木で造られます。
白檀といえばお香で使ったりするとても高価な木で 大仏を彫るというのは前例がなく、はじめての試みということでした。
というのも 白檀というのは高価なだけでなく、とても堅く 原木が小さい為、大仏を彫るのには適さないそうです。
ではどのようにつくるのかといいますと、もともと大仏となると、1本の木から彫れるような大きな木があるはずもなく、「寄木造」という工法で製作するのが伝統のようです。
「寄木造」とはいくつかの木を目が縦になるように継ぎ合わせ、それを接着剤で仮止めし、彫刻の下絵を描きます。
その後仮止めを外し、ばらばらになった素材を分業で彫刻し、それらの彫刻素材を裏側から「内刳り」するそうです。
しかし、白檀が小さいため20センチ角くらいの立法体のもので大仏のかたちに組んでいく方法を用いていました。
緻密な計算の上 まるでLEGOブロックでつくるかのように中が空洞の5mの大仏を数ブロックに分けて造り、
荒彫りしたものを組み上げて、見つめ確認し、またバラして彫ることを繰り返してだんだん細工のほどこされた大仏を仕上げていくのです。
ヤスリを使うわけではありません。最後までノミとカンナを使ってなめらかに彫っていくのです。
そのような新たな挑戦のなかにも ひとびとが手を合わせお祈りする仏様を造るということの意味、
いままで仏像などは神聖なものであるがゆえにつくり手の人間像は想像したことがなかったというか
「ひと」がつくっているということ自体を忘れさせるような存在だったのですが、それをつくっているのは紛れもなく「ひと」であることをあらためて確認することができました。それと同時に 長年にわたり、挑戦し、追求しつづける名匠の哲学と「ものづくり」の奥深さを感じた番組でした。
ちなみに若いお弟子さんは40人ちかくいるそうです。(うちの事務所より多い!)
とても大変だとは思いますが ある意味それだけのやりがいと魅力はあるなぁと思いました。
自分も若ければ...とさえ思わせる内容でした。
機会をみて一度、この広島の大願寺の不動明王像をこの目で確かめたいと思います。
みなさんもお寺で手を合わせるときは どんな人がこの御釈迦様をつくったのか想像してみてはいかがでしょうか。
石 田
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